ZABADAKカバー大会の思い出#1
オッス、オラZABADAKカバー大会の主催手伝い! ZABADAK30周年記念ファン有志カバー大会では小姑ポジションで雑用をしてたぜ! このエントリでは、カバー大会の個人的な思い出を書きます。
つまらない予防線はさておき。今回のエントリでは参加してくださった演奏者13組のうち、前半分について。
1.qua-qua(Vo,Gt)「ここが奈落なら、きみは天使」「河は広くても」
札幌からやってきた「ザバ婚」夫婦デュオ、qua-quaさん。札幌のホテルやレストランなどで活躍されているほか、ZABADAKの北海道ツアーでは物販やPAなども担当。私が吉良さんを追って北海道に行くうちに、いつしかお知り合いに。吉良さんが来る予定だった今年7月の北海道ツアーでお会いした時、遠方からで申し訳ないけどぜひ出てほしいとお誘いしました。この時だいぶ参加者は集まっていたのですが、トップバッターで悩んでいてqua-quaさんが出てくだされれば鉄板だぜ! という邪な気持ちもありました。
今回は最新アルバムの最初と最後、というわかってる選曲。お二人の歌唱と人柄で明るい会の幕開けを迎えられました。さすが富良野カバー下り大会出場者。
2.shijyu(Vo+Gt)「かえりみち」「let there be light」
ギター歴2年で吉良さんのギタークリニックフル参加者。実はギターを弾き始めた頃から存じております。なので失礼ながらそういう目線で語りますけど、上手くなった! カバー大会合わせで飛躍的に上達していて本当にびっくりしました。吉良さんのTACOMAと一緒に着実に歩んでいってください。
3.竹下佳秀(Vo+Gt)「点灯夫」「星の約束」
1番に申し込んでくださった竹下さん。とても心強く感じました。ルーパーとエフェクターで「点灯夫」と「星の約束」のキラキラさを多彩に表現。ルーパー事故もお約束。サウンドチェック後、ギター弾きがのきなみエフェクター周りに食いついてたのが印象的でした。
4.風の人(Vo+Gt)「空ノ色」「遠い音楽」
風の人さんもギタークリニック参加者でギター歴2年。風の人さんは、前にスタジオに集まって延々ZABADAKをやる会でもご一緒させて頂いたんですが、みんながバカ話してても、おやつを食べてても、ずーっと弾いている。その実直さがよく表れた弾き語りでした。吉良さんより1オクターブ下で歌われていたので、次は「ヒースの丘」なんてどうでしょう。
5.Jalan Jalan(Vo,Gt,Cajon)「遠い音楽」「休まない翼」
ZABADAKファンのボーカルの方が、ギターとカホンの2人を誘っての参戦。カバー大会がきっかけでZABADAKを知る方ができるなんて、やっぱり嬉しいですよね。さわやかで軽やかなトリオ。「休まない翼」の締めくくりは、ZABADAKをずっと聞いてる人間にはできないアプローチだと思いました。
6.fleur* feat. Catol(Vo+Kb,Gt)「アジアの花」「Psi-trailing」
キーボード弾き語りのさゆりさんと、ギターのCatolさんのユニット。新居昭乃さんのカバーで活動されているさゆりさんならではの2曲。繊細な歌声とキーボード、アコースティックギターが絡み合ってはかなげな世界に包まれました。
7.桜組(Gt,Gt,Kb,Kh+Andess)「桜」「グスコーブドリの伝記」
主催ユニットです。ギター歴3年のバンマスあぷろ率いる、ギター2本、キーボード、アンデスと鍵盤ハーモニカの妙なバンド。カバー大会屈指の面白枠ですが本人たちはいたって真面目。「桜」をやるために集まった人たちで結成されたので「桜組」というのですが、「桜」をやるのにこの編成を選んだバンマスを小一時間問い詰めたい。
私はアンデスと鍵盤ハーモニカでいろいろ変なことをやっていたのですが、譜面台で客席に見えてなかったみたいです。来年の目標は「譜面台の高さを下げる」にします。
8.セッション1(Gt,Kb,Bs,Andes,Rec,Ch)と風部、客席の皆様「風の巨人」
「桜組」に「らいらっく」のお2人に加わっていただき、客席参加型セッション。私はアンデス担当。
カバー大会をやるなら、客席参加の風部(ZABADAKライブで客席から笛を吹く人たちの通称)曲は絶対やりたい! と目論んでおりました。私自身、今まで風部として何度となく客席で笛を吹いてきましたが、この客席の笛はステージにどんな風に聴こえているのか、ずっと知りたかったのです。
客席のあちこちから立ち上って来る笛の数々。1本1本はピッチも不安定で迷っているところもある。でもそれらをステージで受け止めると不協和音には聴こえないんです。不思議な調和がある。1本1本に自分のできる範囲で精一杯吹く意思がある。
まきのさんのコーラスに先んじるように、あるいは連れられて、客席の歌声が立ち上がる。地の底から沸き上がってくる熱気にふわっと包まれる錯覚。
これが、ZABADAKが聴いていた音なんだ。すごく幸せな瞬間でした。
ただ客席の熱気にあてられて、ステージ笛チームのピッチが上ずってしまいました。この辺は経験不足のなせる業で大変お恥ずかしい。
この「風の巨人」の楽譜、リコーダー部とアンデス部は私が書きました。風部が当日吹く音を予想し、ステージ側の笛とハモるパートがあるのがオリジナルとの違いです。風部が入ることで初めて完成する仕様。本番それが上手くはまったので風部最高だぜ! と思いました。
ちなみに本来はエレキギターがもう1名加わる予定だったのですが、のっぴきならない事情で欠席。いつかフルメンバー版「風の巨人」を実現したい。
後半はまた後日!
テキレボ4おわりました
テキレボ4、終わりました。お運びいただいた皆様、お買い物代行サービスでお買い上げいただいた皆様、ありがとうございました。
薄いながらも新刊2冊+新ポストカード1種、久しぶりの再版1冊。ホヤ色の敷布を新調、お揃いのボックスポップを作って、と、かなり張り切って臨んだんですが……今回は振るいませんでした。第3回の半分程度です。
原因は簡単に言って、「人の流れが来なかった」 これにつきます。
ポスター、ポップ類の視線誘導は想定通りに機能してました。無料配布の配り方も、よく出た第3回と変えてません。頒布物もそんなに変わってません。twitterでの宣伝とリアクションもいつも通り。
何が違うかといえば、やっぱり人が通らなかった。すべてのサークルにOKなサークル配置はありません。即売会は博打。配置ひとつで頒布数は倍にも半分にもなります。そういうものなんです。もちろん配置以外のところでの工夫は大事です。だけど、反省して、やることやってあったなら、もう、そういうもんだと割り切って次に行くしかない。
いいこともありました。
一つ目。お買い物代行での頒布数が今までで一番多かった。これはやはりテキレボに出続けていた成果なんだと思います。公式アンソロジーで同じ設定の連作短編を続ける、毎回新刊無料配布をつくる、企画ものに参加する。そうした積み重ねがお買い物代行の数に反映されたとふんでいます。
いいこと二つ目は、2008年にリリースしたフリーのデジタルノベルをプレイした方が、即売会に来てくださったこと。徹夜明けで朦朧としていた中、お話を伺いつつ「この人キツネか天使かなんかと違うか……」と思いました。ジャンル変わっても来てくださるなんて本当にありがたい。
よそはすごく売れていたとか、twitterに流れてくる「テキレボ戦利品」のタグに自分の本が全然出てこないとか、そういう考えが浮かぶこともあります。
けれど、直接参加が170、入場者数が約200、お買い物代行利用者数が確か20人くらい?(確認してません)、テキレボでお買い物する可能性のある人口約400人。この400人のほげパーセントの方が、うちの本を受け取ってくださった。それってなんだかすげえな、って思うんです。
余談ですが、うちの本はどうして売れないのかしら、と考えたとき、慣れた今となっては「即売会は水物だから仕方がないよねあっはっは」「次は覚えてやがれ」で済んでしまいます。ですが、私が即売会への参加をはじめた頃は、売れないとき、自分を憎み、外部のせいにしていました。
でもまあ、いくら何かを呪ってもしかたがない。次に行くしかないんです。ただ効率よく次に行く、経験を積む、打席を増やす方法はあります。
その方法は工程管理。同人印刷にはだいたい早割があります。早割で安く刷り、浮いたお金でいろんなイベントに出る。文芸同人誌向けのイベントもずいぶん増えました。委託のあるイベントもあります。
オリジナル小説を売るのに向いてそうな即売会のリスト作ってみました。ほら、こんなにたくさんある! 次の目標となる同人誌即売会を定め、スケジュールを切り、書き、出る。これに勝る「売れるための方法」はたぶん、ありません。
「バッターとは、7割打てない痛みに耐える仕事。でも、その痛みに慣れてもいけない」
テキレボ合わせの原稿を書いてるとき、テレビをつけっぱなしにしてたら、とある野球選手の人が言ってたことです。同人屋は仕事じゃないけど、しみじみ共感しました。
売れる売れないは自分にかかっている。でもどんなに頑張っても、ジャンル効果とか配置とか、自分ではどうしようにもないことで、たぶん7割くらいは決まってしまう。それでも、やっぱり3割のための工夫とか気持ちをあきらめないほうが、きっと楽しい。
そうは言っても基本は趣味なんで、適当にやったらいいと思うんですけどね。趣味なのに「あのこはうまくいって、私はうまくいかない」っていう痛みがつきまとうのも不思議なものです。痛みがあるなら、痛みから眼をそらすか、立ち向かうか。
売れなかったと悔いている場合でも、運が悪かったと諦観している場合ではない。私もそろそろ、テキレボ以外にも参加していきたいと思います。まずは初参加、福岡Ade7に委託で出しますよー!
最後に宣伝です。テキレボの公式アンソロジーと、無料配布で配っているシリーズをカクヨムでまとめています。現在、2016年3月に配った分(テキレボ3分まで)を掲載しています。なぜか国会図書館に収蔵されてしまった「ぬばたまの夜の更けるまで」なども入っております。ご興味ありましたらぜひ!
10/8 テキストレボリューションズ4参加します
テキスト系即売会第4回Text-Revolutions(略してテキレボ4)に参加します!
テキレボは昨年3月の1からずーっと参加し続けて、今回で4回目。もはや私のホームみたいな即売会です。
まずは今回の頒布物のお知らせです。
詳細はWEBカタログ見てもらうほうが早いです!
新刊
「やまいぬの借りたふんどし」 無料配布 A5 20p
4000字前後の掌編を3本収録。手軽に読める掌編集。
https://plag.me/p/textrevo04/2549
「海鞘を投げる日(仮)」 無料配布 A5 16pくらい
テキレボでずっとシリーズでお届けしている、東北出身コンビ・数井とせり子と東北と震災となんやかんやを巡る短編シリーズの最新作。今回は、女川のほや祭りの予定です。ちなみに今までの分はウェブで読めます。
「鏡のうろこ」 無料配布 ポストカード
300字のテーマ掌編をポストカードで配布する企画、「300字SSポストカードラリー」に今回も参加しました。今回のテーマは「鏡」です。レトロ印刷さんにお願いして、墨のような風合いの厚紙に黒のツヤインクをあしらった装丁です。とにかく印刷が素敵です。
再版
「淡雪」 700円 文庫本 224ページ
サラリーマンと魔法少女が北海道で鈍行逃避行の現代ファンタジー、再版します。再版にあたり組版、本文の間違い、路線図の図版等を修正しました。
とりあえず告知でした!
ロード・トゥ・はじめての発表会
てて、てって、てってって、てて、てって、てってって、(キューピー3分風に)
今年、私がお世話になった、鍵盤ハーモニカ愛好家・研究家でありプレイヤー、南川朱生(みなみかわあけお)さん。
その南川先生の鍵盤ハーモニカ教室で、初の発表会をやるそうです。
【重要】[出演者募集] HOHNER鍵盤ハーモニカ教室発表会12/10 - 鍵盤ハーモニカ奏者ピアノニマス公式ブログ~日本最大級の鍵盤ハーモニカ情報サイト~
発表会やります! だれでも大丈夫! と聞いて、出たい! だけど、どうしていいかわからない! と、もじもじ途方に暮れる人もいらっしゃると思うのです。
もじもじしてる場合ではない。段取りをわかれば済む話です。
そこで、子供のころYのつく音楽教室に10年通った私が、発表会ノウハウを簡単にお伝えします。
南川教室発表会参加者向け ロード・トゥ・はじめての発表会!
■レギュレーションの確認
演奏についてのレギュレーション
南川さんのtwitterや募集のエントリから情報を引用・まとめると、以下のような感じです。
・入退場セッティング含め6分以内
・カラオケ使用可能
・グループ参加可能
・伴奏者あり
演奏のレベルについては、
・演奏に必要なのは6分以内に搬入搬出含め終わらせるスキルのみ
・ミスしても大丈夫なそこそこゆるい場
・片手単旋律アカペラとかでも、それで自分のケンハモが表現出来てればOK
つまり、どんな簡単な曲(バイエルとかちょうちょとか)をどんな簡単なように弾いてもOK。
ただ、これが「自分が鍵盤ハーモニカでやりたいこと!」になっていればいい。
地味に難しいことを要求されています。でも、南川教室を一度でも受講された皆様なら大丈夫。
■予定表をつくる
発表会は12月10日(土)です。
ここまでの予定表を作りましょう。
予定表を作ったら、
・まったく練習できない日(子供の運動会とか、お彼岸の墓参りとか)
・音は出せないが練習のための時間はとれる日
・楽器の音を出して練習できる日
など、予想しつつチェックしていきます。
そうすると本番の日までどれだけ自分が練習できるのか、見えてきます。意外に少ないのです。
■曲を選ぶ
・好きな曲が一番吹きやすい
・長さ3~4分程度(入退場セッティング含めて6分のため)
予定表から割り出した練習時間で仕上げられそうな曲を選びましょう。
好きな曲といわれてもピンとこないなーという場合は、楽器屋や本屋の楽譜売り場で、ピアノやアコーディオン、ハーモニカ、リコーダーなどの楽譜を片っ端からチェック。吹いてみたい曲を探しましょう。
お使いの機種で音域が足りないときは、オクターブ下げるなどで対応を。
■練習方法(曲ができるようになるまで)
発表会の類に出るのが学芸会以来! みたいな方は、曲の完成目安を本番の1か月前までにしておくとよいです。
音を出しての練習時間が取りづらい方も多いでしょう。ですが、音を出さずに出来る練習もたくさんあります。
・音源と一緒に歌う
そらで歌えるようになるまで聴いて歌う。歌は上手くなくてよく、にゃーとか、あーで大丈夫。この歌が鍵盤ハーモニカのブレスや呼吸になります。
・音源を聴きながら手を叩く
リズムの把握になります。何拍子の曲かもチェック。楽譜に書いてあります。
・楽譜を見ながら聴く
どこで自分がブレスをするか、この音はタンギングするかしないか、ビブラートを入れるならどこか、ねちっこく検討。私は黒鍵が苦手なので、黒鍵の音符に色を塗ったりもします。
・運指と鍵盤ハーモニカの持ち方確認
自分の使う機種を出して、音を出さずに運指を何パターンか検討。弾きやすい位置を見つけましょう。運指は持ち方でも変わるので、持ち方も合わせて確認。
・南川教室のレジュメを読み返す!
教わったこと、書いてあることが今やっている曲のどこかに反映できないか、という目線でレジュメを再チェック。
鍵盤ハーモニカを吹ける環境のときは、以下のような練習がお勧めです。
・メトロノームに合わせて吹く
メトロノームはスマートフォン向け無料アプリがあります。最初は、間違わずに弾けるペースでゆっくりと。次第に速度を上げます。
・楽譜を分割し反復練習
通しで一曲練習ばかりしていると、弾けないところはいつまでもできません。細かくパートに割って練習を。
・自分の吹いた曲を録音して聴き直す
後から聴くと注意すべき点が自分でも見つけられます。やり直しなしで録音してみましょう。
■練習方法(曲ができるようになってから)
人前は緊張します。すげえ緊張します。なので、
・他人に聴いてもらう
・自分の吹いている様子を録画して見直す
などを繰り返して、見られること、聴かれることに少しでも慣れましょう。
あとは、
・入退場の練習
端っこから入ってきて、真ん中で頭を下げる程度?
・簡単な自己紹介や曲紹介の練習
もしておくと、本番の日、自分を助けてくれます。
■そもそも「自分のケンハモを表現」ていわれてもなあ…
私もよくわからないんですわ。
ただ、自分と縁のあった鍵盤ハーモニカで、自分の選んだ曲に、教わったことと練習の成果を注ぎ込めば、必ず自分のケンハモらしさは生まれます。
本人にはわからなくても聴く側には伝わります。少なくとも南川先生にはバレます(笑)
逆に言えば、発表会のために1曲に真摯に向かい合うことで、はじめて「自分のケンハモらしさ」「自分が鍵盤ハーモニカでやりたいこと!」のかけらに触れられるのです。
せっかく南川さんが作ってくださった機会です。どーんと出ましょう、どーんと。もじもじしてる場合じゃないっすよ。
えらそうなことばかり並べましたが! 私も、恐る恐る参加させていただく側です。まだ曲とか編成が決まってないので申し込みはぎりぎりまで引っ張ります。9/17までに決めなきゃ!
3/21 テキストレボリューションズ3参加します
3/21に開催される、テキスト系即売会第3回Text-Revolutions(略してテキレボ3)に、参加します!
配置はC-03「やまいぬワークス」
頒布物
- 第2回300字SSポストカードラリー「宇宙への手紙」 無料配布
「手紙」を題材にして書いた300字のショートストーリーを2編おさめたポストカードです。デザインは年賀はがきパロディです。
- パイプライン(再録) 無料配布
少女小説ラリー参加作品。2009年に、よそに寄稿した作が少女小説ラリーにちょうどよかったので、再録しました。女子中学生二人が屋上で出会ったり話したり。
- タイトル未定 無料配布
昨年からずっと書き続けている、震災を巡る東北出身者コンビの連作短編の最新短編を頒布…! の予定なのですが、今回、自分でも驚くほどに書けません。震災の節目の年……ということもあって、想像以上に弱っているようです。でも、最低限ペーパーくらいの分量の掌編はご用意したいです。今書いてます。
これらが、今回の新しい頒布物です。そのほか、前回テキレボ2で頒布したものはみんなもっていく予定です。
サークル情報はこちらのウェブカタログもご参照ください。
アンソロジー本に参加しました
- Text-Revolutions公式参加サークルアンソロジー「猫」
「しあわせな猫の飼い方」という4000字の掌編を寄稿してます。
ウェブでも読めますが、紙の本も購入できます。すごい分厚い。
- 「おっさん×少女」アンソロジー『掌を繋いで』
俳優のおっさんとアイドル少女のほのぼの殺伐会話掌編「おっさんと呼んでみろ」を寄稿しました。参加者40人近く、354ページの特厚文庫本です。
頑張ります。お運びの際は、よろしくどうぞ。
冬の虹不安と遊ぶ笛と飛ぶ #2
2015年11月21日(土)富良野
朝、あらためて見た旭川駅は記憶より10倍は大きくなっていた。とにかく横に長く、脇に大きなイオンと映画館、駐車場までついている。
その駅中の物産館で、東京から来ている笛班Sさんとばったり会う。剣淵のスモークチキンや燻製玉子を二人して買い込み、また後で、とあいさつを交わす。
11:33旭川発富良野行に乗車。久しぶりの富良野線。一両編成の車内は混んでいる。その中に見知った顔をいくつも見かける。キハ150の音は細く上品で、美瑛の丘陵を登る時でさえ、極端に感じを崩すことはない。田畑にダイサギやアオサギが佇んでいる。湿り雪が舞っている。小さな川でカワアイサのオスが2羽、争っている。1時間ほどの車窓。
12:40富良野着。空が明るい。虹が出ている。Sさんと合流し、カラオケ屋で「鞦韆」を復習する。もっと指が回るように。昨日より動くように。
カラオケ屋から出たら、殴りつけるような雪。目の前が白い。旭川よりは寒い。でも、雪は重く、気温の高さを示している。空知川に架かる五条大橋を渡る。雪は歩いているうちに止んでくる。
1年ぶりの富良野のやは民家を利用した陶芸カフェ。ステージは奥座敷、客席はありあわせの椅子を並べた板間と畳の小上がり。
重たい雪が降っては止み、止んでは降り出す。ステージの真横にある窓から、何羽もカラスが飛び交っているのが見える。ハシボソガラスらしい濁った声が響く。
開演前、小さなお子さんを遊ばせていたお母さんが、「子供が騒いでしまうかもしれませんが」といったようなことを、吉良さんに尋ねている。吉良さんは「子供も音楽ですから」と答える。ZABADAKの地方ツアーについていくと、しばしば親子連れの姿を見かける。ZABADAKのステージは子供が泣いたり飽きたりした程度で揺らがない。むしろ子供のほうを惹きこんでしまったところを、今までに何度も見てきた。
けれど吉良さん、客席の笛は音楽になっていますか。と、胸の中で問う。
15時、開演。昨夜のアンコールだった「もっと近くで」「遠い音楽」のメドレーから始まる。昨日から続いているようでいて、新しい今日。のやのステージは、あまり音を響かせず受け止めてしまう。そのためか今日は生音ではない。ハープのサウンドホールから出たケーブルが見慣れぬプリアンプに繋がっている。少しだけ背中を押しているようなPA。
「鞦韆」の出番は早く4曲目。この曲をやるのは旭川と富良野のみ、と伺っている。これで最後だ。客席を見て笛を数える。一緒に練習したSさんの硬い顔。さっきまで、あんなに吹けていたのに。でも、わかる。私だってどこかが震えている。
笛の入りは1番が終わって、間奏の半ばから。歌が終わる。1小節半たっぷり聞く。構えて息を入れる。恐れてもためらわずゆく。
昨日より合っている、と思う。Cさんも昨日の迷ったところを直してきている。1日できちんと変わるなんて。すごい。嬉しさが力になる。昨日よりもう1本笛が増えている。これは今日から来た仙台のSさんの音。八分音符分、ずれてるところがある。
うまくいけるか、と思ったら、みっともないほど足に震えが来た。少しだけ速くなる。みんなの笛がすっとついてくる。普段あんまりクリックに合わせて練習しないからか、他人の音に引っ張られやすい笛チームである。テンポを抑える。抑えられただろうか。
聴かせどころが終わる。ここから一人二声のパート。アンデスは笛のくせに和音が吹ける。柔らかくうねりの出ないように息を入れる。横隔膜と喉、息の通り道全部を使って音を震わせる。ぶらんこのように優しく揺れればいい。自分じゃない誰かが、代わりに指を使っている気がする。その誰かが丁寧に指を置いてくれる。
「うたがばしょにおいわいされている」
かつて、この富良野のステージで歌うことを、そう誰かが言っていた。今、その「おいわい」の欠けらに触れた気がした。
今日のメンバーは、吉良さんと林太郎さんだけではなく、ゲストが2名参加する。
まずは、u-fullのYukaさん。華奢な体にアコーディオンを抱き、歌う。一息に歌いながら雲の端を目指す春のヒバリを思い出す。富良野平野を行くキハ150のようでもある。
休憩を挟んで、今度はケーナとサンポーニャの岡田浩安さんが登場。岡田さんの笛は奪うも寄るも自在。「コフルヤマ」の間奏では、まさにそこに欲しかった! という位置に音が入ってくる。旭川で二人「コフルヤマ」を聞いたときから、ここに岡田さんの笛が必ず来るだろうと待ち望んでいた。他の曲でも岡田さんの笛は必ず欲しいところに圧倒的に添うように現れる。練り込まれた筋立ての物語を読む思い。
またYukaさんが入って、4人編成の「TEPHRA」「POLAND」はこの富良野だけの特別。窓の外はいつの間にか暗い。風の気配だけがある。
歌える人は歌って、と言われた「光降る朝」は、1番はまずYukaさんのソロだろうと予想し様子を見る。伸びやかな声を慈しむ。2番から声を重ねる。客席から、ステージから、声が増えていく。
山を縁どる 木々の葉が風に落ちて 空が急に広くなれば
見慣れた峰が近くに見える 雲に届く梢が風に揺れてる
特に大好きな2番の歌い始め。カシワしか葉の残っていない、まさに今の富良野を描いた歌をここで聴いて歌える喜び。
アンコールの「EasyGoing」で締めて、ああ、富良野はやっぱり特別だなあ、と思っていたところで。もう一度「POLAND」をやるという。しかも今度は客席も一緒に、だ。
岡田さんの笛の前に、我々のか細い音など吹き飛んでしまうだろうが、どうですか、と言われたならば、やってみよう。普段は客席側の笛と調和するように心がけている。しかし、どうせかき消えてしまうなら、好きなようにやろう。アンデスの唄口を外し、楽器に直接息を吹き込む。こうするとブレスでのコントロールがしやすくなる。笛らしく歌わせやすくなる。その一方で高音の伸び響きは悪くなる。
かなり速いイントロ。客席のみんな頑張ろう、と小さく笑う。笛の出番がやってくる。岡田さんが吹くのは、よく知っている「POLAND」の笛とはすこし違う節回し。でも、さっき聞いたばかりだ。できる範囲で合わせてみる。普段は使わない装飾音をいっぱい入れる。アンデスは、アンデス地方の笛の音に似ているからアンデスと名付けられた。ならば、ほんのわずかでもステージにある本物のアンデスの笛に近づけるところがあるはずだ。圧倒的な音に自分のかすかな音を重ねる。揺らす。伸ばす。でも、届かない。音が足りない。
終えてみて、やっぱり、これ、客席の笛要る意味あったんだろうか……と、途方に暮れる。こうやって大きな存在に翻弄されたことが、いつか経験として意味を持つ日がくるのだろうか。
素晴らしいライブだった、という聴衆としての充実。「鞦韆」と「POLAND」、二つの難曲のほんの切れ端を担った客席笛チームとしての手応えと不甲斐なさ。
大きなものを持て余し気味に抱えながら、帰途へつく。薄平たい雪が舞う。積もりそうな雪ではない。まだ痛みのような寒さが足りない。
明日、もっと寒くなればいい。
冬の虹不安と遊ぶ笛と飛ぶ #1
もっと、あまさず聴けたんじゃないか。もっと、うまくできたんじゃないか。帰ってきてだいぶ経つ今でもそんなことを思い続けている。
11月20日から11月23日まで、今年もライブを追って北海道へ行ってきた。その4日間のことを、少しだけ書いていく。
2015年11月20日(金)旭川
旭川行の小さな飛行機は甲高い風の音を響かせながら高度を上げていく。その機内で、笛の練習をしていた。何度も繰り返し宙で指を動かす。エア笛。違わず弾けるよう、迷わず息を吹き込めるよう。
「鞦韆」という、懐かしいのに実在しない国の童謡のような歌。鞦韆、ぶらんこ、の名の通り揺れるメロディライン。吹くのはもう問題ないはずだ。けれど自信はない。
今回ついていくのは、ZABADAKのギタリスト吉良知彦さんと、アイリッシュハープの木村林太郎さんのユニット「きら☆りん」の北海道ツアー。いちばん好きな組み合わせのユニットなのだけれど、年に一度程度しか現れない。それもだいたいが北海道・東北絡みのツアーになる。
でも、それでいい。いちばん好きな組み合わせのユニットを、大好きな寒い土地で聴けることが、年に一度もあるなんて。
冷える、雪が降ると聞いていた旭川はただ涼やかだった。ちっとも寒くない。面白くない。西武デパートに寄る。手袋を買う。旅先でちょっとした使うものを買うのが好きだ。この手袋も、これから使うたびに旭川のことを思い出すはずだ。
寒くないが手袋をはめる。今日の会場、神楽市民交流センター、通称「木楽輪(きらりん)」は、旭川駅から橋を渡って行く。川の上にだけ冬がある。
場内は二階まで吹き抜けの高いアーチが目につく。旭川の木材を活かした木造らしい。
二階の控室から二人が降りてくる。階段の一番下で、吉良さんがはにかんで笑う。今日の構成は三部構成。
まずはハープの林太郎さんのソロから。はじめての会場、ツアーの初日、その第一音、ハープの音色が伸びる。マイクやスピーカーは一切ない。会場の形や材質の力だけで、広がっていく。音が太くなるのではなく、細い音が細いままに何周も巡る。チリチリと鳴る暖房の音さえも一緒に巡っていく。
きら☆りんが木楽輪でライブをやる、ってなんの冗談だろうと思っていた。けど、この場所は、間違いなくこのユニットに合う。
スコットランドやアイルランドに由来する歌、物語や詩に題材をとった歌。林太郎さんの音はどれも水辺に吹く風のように、やわらかで湿りがある。
二番手の吉良さんのソロコーナーは、「他人のうた」特集。クリムゾン、ELP、ケイト・ブッシュ、ピンクフロイド、そしてビートルズと、ZABADAKのルーツが惜しげもなく繰り広げられる。1本のギターと1つの喉で、室温が何度も上がったかのような錯覚を覚える。
第三部は二人が合わさって、主にZABADAKの曲。駆け上がっていく吉良さんの声、空間を満たす林太郎さんの声。マイクがなくても二人の歌と音は部屋の隅々まで届く。
二人の重なりを堪能している半ば、「この中で笛をおもちの方は……」と客席に呼びかけがかかる。ZABADAKでは稀にある客席参加型曲。事前にtwitterで予告をいただいていた。それが「鞦韆」という曲だ。
andes25F、アンデスを構える。アンデスは鍵盤型の笛だ。客席を見れば同じように笛を持ってやってきた人の顔が見える。数える、音をイメージする。今日のステージの音に対してこの笛の数、音量はどうか。控えめにするか、それともしっかり吹くか。吹きかたはCDに似せてタンギングを強めにするか、響くよう柔らかく息を入れるか。
去年も、このツアーで客席から笛を吹く機会があった。その時は何もないところへ身を投げるような不安があった。今年は同じ飛ぶのでも、船に並んで飛ぶ海鳥のようでありたい。
曲が終わって、微妙な出来に頭を抱える。
気持ちを入れ替える。弦の震えに目をこらす。1日目の音が終わっていく。
終演後、「鞦韆」で音が迷っていたCさんに楽譜を渡し、音の違ってたところについて話す。Cさんとは、以前遊びのコピーバンドで一緒に演奏したことがある。音に対しての傾向や感覚は、まったく知らない人よりかは、わかる。でも、その気安さからきつく言い過ぎたかもなあ、と後にホテルで枕を抱える。
もう1人の笛チーム、Sさんと駅まで帰る。別れて旭川の街を歩く。やっぱり寒くない。手袋を外す。コートの前を開ける。2度だと表示されている。寒く感じられない。
明日は、もっと寒くなればいい。
旭川の思い出
両サイドを固めたセイコーマートのつまみの頼もしさよ。えのき、美味いのかなあ……。 pic.twitter.com/r9om9iM1Ol
— 斉藤ハゼ (@HazeinHeart) 2015, 11月 20
おつまみえのき……あの……ほんとに、えのき干しただけの味です……塩もなんもねえ……すごい淡味……噛めば噛むほど、えのきの土臭さが鼻に抜け、繊維が口に残る。冷えてない霜柱みたいな味。「原材料:えのき(北海道) 」しかないの、納得。 pic.twitter.com/OeHViuQjpG
— 斉藤ハゼ (@HazeinHeart) 2015, 11月 20